てんつなぎ vol.1 NPO法人 atamista代表 市来 広一郎

てんつなぎvol.1では、熱海で日々まちづくりに取り組んでいるNPO法人atamista(アタミスタ)代表の市来広一郎さんにお話を伺いました!

熱海からジェット船に乗り、初めて伊豆大島にきた市来さん。
「伊豆大島がこんなに近いのは発見ですね。熱海とはまた違って自然や町並みが個性的でとても興味深いです。」
離島ならではの自然溢れる風景に感心しながら、町歩きを楽しんでいました。

「大学卒業後、バックパッカーとして世界中を旅する中で特に印象に残っている光景があります。それは、人々が楽しそうに暮らしている場所、自分が暮らす地を誇らしく語る人がいる場所。自分のふるさとである熱海も人々がいきいきと楽しく暮らす町にしたい。」旅を通じて漠然とそう考えるようになっていったそうです。

その後、都内の企業に勤め、28歳にして熱海にUターン。「いろいろ旅をしてきて熱海を見つめたときに、これだけの素材を持っている上に東京から近い場所は世界中を見回してもそんなにないのでは?きっともっと魅力的な町に出来るはず」と熱い思いを胸に熱海での活動をスタートしました。
しかし、観光客が地元の人に熱海の良いところを尋ねても、「熱海には何もない」と答えが返ってくるという現実。そんな話を聞くうちに、まずは地元の人が変わらなければと直感的に感じ、市来さんの取り組みが始まりました。

地元の人の意識を変える

地元の人たちが地元を知らない現状や当たり前過ぎてその価値に気づいていない状況を変えたい。そんな想いから生まれたのが「熱海温泉玉手箱」、通称“オンたま”です。
熱海にある資源を掘り起こし、それを地元の人ならではの視点で取り組んでいくことで、知っているようで知らない熱海の魅力を伝えていく。いわゆる、地元の人主導による地元の人参加・体験型の交流ツアーです。

例えば、空き物件巡りや、和菓子屋やパン屋等テーマを絞ったお店巡り等、町中を歩いて、行く先々で出会う方々との交流や思わぬ情報を発見することで、誰かに伝えたくなったり、自分自身がリピーターになったり、そんなきっかけが生まれます。
地元の人たちがガイドをして、地元の人たちが参加する。ツアーメニューは200種類以上に及び、参加者同士の交流を通じて見えなかったニーズが見えてきた結果、地元の人たちの視点が変わるばかりでなく、そこから新たな団体が生まれたり事業化されたりなど、前向きなサイクルが生まれてきていることを実感した市来さん。

“オンたま”をはじめたことで、

・自由にいろんなことをやれる雰囲気が出てきた
・やる気のある人とのネットワークが出来た
・何かをやろうと思った際にお互い協力し合える仲間が出来た

これが熱海で活動を続けていく上でかけがえのない財産となっているそうです。

熱海の町中を再生しよう

そんなつながりを活かして次に取り組んだのが熱海の大きな問題である中心市街地の衰退に対する取り組み。その名も、RoCA(Renovation of Central Atami)プロジェクト。熱海の市街地に点在する空き物件をリノベーション(既存の建物の用途や機能を変更して性能を向上させたり付加価値を与えたりすること)することで、新たな価値を生み出す場所をつくる活動です。
まずは先行事例を作って実現性を知ってもらうためにも、自分達で熱海の中心街である銀座通りの空き物件をリノベーションし、CAFE RoCA(カフェロカ)というカフェを始めました。開店してから2年が経過した現在、通りに雑貨屋さんなどの個性的なお店が何件かできる等、周辺に変化が現れ始めています。

そして、CAFE RoCAの経験を活かしてリノベーションスクールを開始。リノベーションスクールは、実在する空き物件(遊休不動産)を案件として、まちづくりの視点から改修・活用を考える「リノベーション」の実践技術を学ぶ場です。そこで生まれた事業プランをもとに新たな事業が始まっているそうで、CAFE RoCAをきっかけにRoCAプロジェクトは着実に動き出しているそうです。
そんなリノベーション事業を展開する中で感じたのは、「箱(建物)は人が集まらなければただの箱」ということ。そこで、人が集まる仕掛け作りとして始めたのが「海辺のあたみマルシェ」でした。

人が集まる仕掛けづくり

あたみマルシェはCAFE RoCAのある銀座通り沿いで開催するクラフト&ファーマーズマーケットで、伊豆半島、熱海周辺の一次産業に携わっている方や、創作活動を行っている作家さんの作品を集めて販売しています。今では6,000人もの人が集まり、売れ行きも好調で出店者にも評判の大人気イベントに成長しています。

市来さんの取り組み、どれも楽しくてワクワクする活動ですよね?そこには「人々が元気に楽しく、誇りをもって暮らせる場所をつくる」という共通目的が根本にあり、そのアイデアと行動力には見習うところがたくさんありました。

市来さんがバックパッカー時代に見た異国の地の人の笑顔、熱海でもそんな笑顔に出会うために市来さんは今日も動き回っていることでしょう。
今後も熱海の動きから目が離せません。

ゲスト:NPO法人atamista(アタミスタ)代表:市来広一郎

静岡県熱海市において「100年後も豊かな暮らしができるまちをつくる」をミッションに、(1)生態系のような地域社会、そのために、(2)すべての人が自分の想いをカタチにできる社会、そして、(3)自分たちの町を自分たちでつくっている地域社会の実現を目指し活動しているNPO団体。地域に根ざした活動を日々すすめている。http://atamista.com/

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